【 My Favorite Things 】Temple Cummins January 17 2025

Temple Cummins は Craig Kelly 亡き後、ずっと憧れのトップオブマイヒーローズとして君臨し続けている。

憧れと言っても、話してみたい、一緒に写真撮りたい、サイン欲しいという種類の憧れではなく、スノーボードをあんな風に乗り、あんな風に扱えるように、いつかはなってみたいという種類の憧れで、どんなボードに乗っているのか、どんなセッティングなのか、どのくらいの身長でどのくらいの体格なのか、それよりなにより、本物の実物の滑りを目の前で見てみたい、体感してみたいとずっと思っていた。

遠藤励をはじめとする Temple の滑りを間近で目にしたことのある人たち曰く、とにかくリラックスしていて、とにかく速いらしいのだけれど、実際に目の前で見る方法があるとすれば、彼らのローカルスポットである米ワシントン州のマウントベイカーに行き、遭遇するまでゲレンデをウロウロすることくらいで、それは非現実的だし、まあ夢の話だなと思っていた。

その夢が今回の MERVIN Ride で叶ってしまった。

実際に目の前で見た、本物の Temple Cummins の滑りは圧倒的だった。

バインディングを付け、ボードの上にスッと立ち滑り出すと、まるで凪いだ湖面に浮かべたSUPの上にでも乗っているかのように、どこにも力の入っていないリラックスしたその立ち姿をキープしたまま、まあまあ硬く、まあまあボコボコで、フラットライトで見えにくい、つづら折りの迂回路コースを超高速で降りてゆく。

しかもそのライン取りは、入り組んだ渓谷を流れ落ちる流水の如くしなやかで超スムーズ。

置いていかれまいと必死に滑って追いかける自分に入ってくる地形や雪面のコンディションの情報と、Temple の力の抜けきった後ろ姿から入ってくる情報との乖離で頭の中は???でいっぱいになってしまった。

天性の運動神経やセンスはもちろん持っているだろう。

しかしそれのみでは辿り着くことのできない境地に彼はいる。

膨大な時間をかけ滑りを磨き、練り、鍛え上げることでその高みに辿り着いているのだ。

猛者たちの揃う米ノースウエストのローカルから最上級の尊敬を集め、遠藤励が先生と呼ぶ、その理由が少しだけわかった気がした。

これが10代のニューカマーの話であれば、最近の若者はすごいねー。時代だねー。で終わる話かもしれない。

しかし Temple は俺の1コ上、今年51だ。

もう俺も勝手に先生と呼ぶしかない、一生ついていくことに決めた。


All you need is love January 10 2021

店で取り扱う商品をチョイスする上で指針としているいくつかの要素がある。

その中でも一番大事にしている要素として挙げられるのが「その商品を愛せるかどうか」である。

AREth チームが開発に携わった DEELUXE のスノーボードブーツ、RIN を例に挙げてみよう。

AREth 代表の永坂光寛をはじめ、小松吾郎や西山勇ら開発に関わったチームライダーとは自分で店を始める前からの旧知の仲で、彼らがどんな山で、どんな滑り方をしているのかを僕自身よく知っている。

だからこそ、彼らがスノーボードブーツを生み出す上で抑えているポイントのひとつひとつに共感できるし、納得もできる。

共感と納得をもって何かを見続けた時、そこに生まれるのは愛着だ。

店の人間が商品の魅力を客にアピールする時、持っていて最も心強い武器はその商品への愛着だと思う。

「僕はこの商品のこういうところが本当に素晴らしいと思うし、めちゃくちゃ気に入ってるんですよね。」

そう言われてこの商品微妙そうだなと思う人がいるだろうか。

styrus は僕がひとりでやっている小さい店だから、愛着のない商品はひとつとして扱っていない。

これはとてもラッキーなことで、小さい店の強みでもあると思う。

この話の流れでいくと、僕が店頭で繰り広げているのはお惚気トークということになるが、人へのお惚気が微笑ましいのだから、物へのお惚気も微笑ましいに違いないはずだ。

うちで取り扱っている商品が気になって、その商品の魅力を知りたくなったらぜひ店頭へ。

微笑ましいお惚気トークをたっぷりとご用意してお待ちしております。


人生とは旅である January 05 2021

東京で生まれ育った自分にとって、スノーボーディングは常に旅であり非日常で、特に毎年シーズン初めの何日かはその非日常を身体に馴染ませるところからスタートする。

体感温度はもちろん、目に映る景色や外気の匂い、クルマの運転に求められる事まで、雪の無い街とは明らかに違う世界がそこには広がっている。

最初はまるでリアルな映画を観ているようだけれど、通うたび身体に馴染み、半月もすれば当たり前の光景になる。

非日常が日常になってゆく、その変化のグラデーションは毎年の事ながら新鮮で、刺激的で、心地よい。

今シーズンは特にいきなりコンディション抜群で最高のスタートを切る事ができとても幸せだ。

春になるまでの短い間の享楽に全力で耽りたいと思う。